あの街のiestさんに会いに行こう

東京都東久留米市 M邸

バルコニーが内と外をつなぎ、螺旋階段が家族をつなぐ。
「つなぐ」が暮らしを豊かにする家。

ここにいるとどこからも緑の気配が感じられて気持ちがいいんですよ。と、開口一番に奥さまはおっしゃられた。1階にLDKを配置したM邸。リビングからひとつづきになったようなバルコニーの木柵のスリットや柵の上から隣の緑地の緑が、贅沢に気持よく目に飛び込んでくる。隣家との境も閉鎖感のないスリット入りの木柵でプライベートが確保されていて、内側にさりげなく目を楽しませる緑が植えられている。またキッチンの窓からは、裏の果樹園の緑が見えるが、低い位置の窓のため、視界からは余計な景色が遮られて、気持ちのよい緑の気配だけが感じられる。実に巧妙に計算された設計で、外の緑が取り込まれているのである。

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植栽スペースもあるウッドテラスにはスリット入りの木柵で目隠ししながらも外の緑を贅沢に気持ちよく取り入れている。また、キッチンの小窓は低い位置に配置されていて、裏の果樹園の緑の気配だけをさりげなく取り入れている(写真右下)。

「この家を設計してくれた本間先生に最終的にお願いする決め手になったのは、先生がプロポーションということを言っていたんです。」と語るのはM邸のご主人のMさんだ。「先生の得意技はなんですか?みたいなことをざっくばらんに聞いてみたんです。すると先生は、家の間取りとか見てくれとか素材とか、そういう表面的なことなんかは経験値があればできることだけれど、大切なのはそれだけではなくて比率や調和や間などのバランス、つまりプロポーションをしっかり考えて設計することが、実はすごく心地よさにつながってくるんです。私はそれをとても大切にしていて、住む人の目線からいつも考えています。というようなことをおっしゃられたんですね。それで、なるほどなぁと思ってお願いすることにしたんですが、そのプローポーションの大切さということが本当の意味でわかったのは、家が完成して暮らしはじめてからでした。ソファに座ってさり気なく見える景色の見え方とか、外から入ってくる光が織りなす模様の季節による変化とか、天井もあえて低めに抑えてあるんですけど、その空間が与えてくれる落ち着きとか、ああ〜、こういうことなんだぁと、暮らすほどに実感できてくるんです。」

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振り返ってみると「これはいやです」という案は1回もなかった。

「本間先生にお願いする前は、工務店さんやハウスメーカーさんにも相談していたんですが、でも、こちらの要望をそのままプランに落とし込んだような提案ばかりで、どうも納得がいかなかったのです。本間先生にお願いしてからは、打合せで意見が異なるようなことはあったのですが、そのたびに、なんでそういう案なのかを丁寧に説明してくれたので、とても納得しながら進めることができました。振り返ってみると「これはいやです」というような案は1回もありませんでしたね。設計のためのヒアリングでは、現状のライフスタイルに加えて、どんな暮らし方をしていきたいのかとか、使っているもののサイズだとか、とてもきめ細かくヒアリングされて、それがなるほどなぁというようなカタチになってプランに盛り込まれていく。建築家との家づくりってこんなに違うんだと驚いたものです。」

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キッチンからはダイニング、リビングを見渡せるので子育てしながらの家事もしやすい。バルコニーの緑も気持ちよく目に入ってくる(写真左)。すべて奥さまの身長に合わせて設計された働きやすいキッチン。奥に見える洗濯機置場、さらにクローゼットへと家事がしやすい動線が熟慮されている。

周囲との関係を考慮しつつ、違和感なく、個性を魅せる外観。

そんなM邸の外観は、横葺きされた濃いグレーのガルバリウム鋼板で2階部分が覆われている個性的でスタイリッシュなデザインだ。そして、それでいて、周囲にしっかりと溶け込んでいて違和感がない。
「周囲との関係というのも、とても大切だとおっしゃっていました。その地域やその場所に落ち着く色や形があるのだと。このグレーのガルバリウムも、この場所に建てるから、また家のサイズ、デザインがこうだから、このグレーが合うということでこうなったんです。提案してもらったときも3色で、最初はいろんな色があるのに3色だけ?と思いましたが、そのときにそういう説明をされて、なるほどと納得したわけですが、こうやって完成してみると、周囲と違和感がないけれど、ちゃんと洒落た感じになっているんですね。」

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幅広のガルバリウム鋼板が横葺きされた特徴的な外観。バルコニーの細い手すりとマッチしていてシャープな印象を与えている(写真左)。周りの家との調和も見出さずに違和感なく、スタイリッシュでしゃれた外観を保っている(写真右)。

暮らしやすさの中心にある螺旋階段。
この階段がいろんなものをつないでくれる。

さて、そんなM邸の大きな特徴と言えば、家のまんなかにある螺旋階段である。この螺旋階段が1階と2階をつなぐ、たんなる通路としてだけではなく、風や光、家族の気配や、匂いや音などさまざまなものをつなぐ、M邸の快適や暮らしやすさの中心になっているのだ。
「決して広くはないこの家の中に絶妙なサイズで収まっているんですよ、この螺旋階段が。この階段の上にはスリットの入ったトップライトがあって、そこから入る光がすごくいい感じなんです。この階段を通じて光や風、2階にいる娘の気配やさまざまなものが伝わってくる。また階段としての使い勝手はもちろん、どこから見ても、美しくて、いい空間のアクセントになっているんですね。とっても気に入っています。」

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家の中に絶妙に収まっている螺旋階段。1階と2階をつなぐ通路としてだけではなく、さまざまなものをつないでいる。娘さんのための絵本がディスプレイされていて、ちょっとしたライブラリーにもなっている。

施主の要望を細かく聞き込んで、居住空間デザインのプロフェッショナルとして咀嚼をして、プランに反映していく。暮らすほどにわかっていく、プロポーションの大切さなど、施主と建築家との二人三脚によってつくっていく家づくりを経験し、そして完成した家で暮らしてみて、建築家に家を頼んで本当によかったと大満足のMさん夫妻。これからも、まだまだ、暮らしてからわかる発見があるかもしれない。

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